待ち伏せするなら小川町。
待っていればほどなく現れる。
黒いサングラスで目を覆った長身の彼。
「これ!」
服屋のビニール袋に入れたそれを押し付ける。
「何?」
なぁに、と伸ばすような独特の口調。
「越生と!お揃いだけど!」
なのに、こちらは何故だか喧嘩腰になってしまう。
「あ、」
中身をびろびろっと広げる。
縞模様の手編みのマフラー。
「ありがとう」
にこにこ笑って八高が言う。
眼は隠されているけど、口元は笑っていて。
八高がサングラスをしたのはあの悲惨な事故以来だと聞く。
だから、無闇に外せとは言えなくて。
「つ、ついでだから!」
「それでも、作ってくれたんだよね。だから、ありがとう」
「あ……」
最後のありがとう、をサングラスを外して言ってくれたから。
言葉が出なくなってしまった。
|