それもよくある朝の光景。
「宇都宮、洗面所まだ空かないのか?」
「んー、もうちょっと。さっき顔洗ったんじゃなかった?」
「ヒゲ!剃りたいんだよ」
「……高崎は毎日剃らなくても平気でしょ」
「何だ、その間はっ!俺だって、二日に一度は剃るっつーの!」
「ふうん」
ヒゲを剃り終えた宇都宮がざぶざぶと顔を洗う。
「伸ばせば?」
「じゃあ、お前は?」
「んー、運輸業だけど、客商売だからねー」
「おまっ、それで俺にヒゲ伸ばせばとか言うのかよ!」
「高崎はいいんじゃない?ワイルドで」
「何だ、それは」
シェービングクリームを手に取った高崎の顔に、宇都宮は手を伸ばし。
軽く、触れるだけのくちづけ。
「……やっぱり伸ばさない方がいいな」
「何だよ、それ」
高崎はつい今のキスなどなかったようにクリームを口の回りに塗りつける。
「だって、ざりざりして痛いじゃない?」
そんなことを言うから、高崎はクリームだらけの顔のまま、宇都宮にキスを返してやった。
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