ぼくたちの普通





高崎は不意に目を覚まして、おかしい、と思った。
灯りを消して寝た筈なのに煌々と蛍光灯が照らしている。
それから、他人の気配。
「えっ」
起き上がろうとして違和感に気付いた。
後ろ手に縛られている。
「てめっ、宇都宮!」
「何?」
ベッドの端に腰かけていた宇都宮が振り返る。
「入れるまで目覚まさないかと思ったよ」
「――――っ!!」
あまりの言葉にがばりと勢いで起き上がる。
「おまっ、何する気だった!? 人が寝てる間に!!」
「だって、高崎が起きないから」
いけしゃあしゃあと嘯く。
「起きなかったら、何してたよ!?」
手の自由を奪われているので、膝でにじり寄る。
「何って――」
「待て、言うな! 聞きたくない!」
「訊いてきたのは高崎の方じゃない」
宇都宮は近付いてきた高崎の肩を掴んで押し倒す。
「ちょっ! 待て! やめろ!」
じたばたを暴れる足を上から膝で抑える。
「――続き、しよっか」
「いらん! 早く退け! それでこの手をどうにかしろ!」
身体の下敷きになった腕が徐々に痺れだす。
「んー、どうしようっか」
寝間着代わりに着たTシャツの裾から手を入れる。
「やめろって」
どうにか身体を起こそうとするも、上から抑えつけられて断念する。
「分かったから、これ解け!」
身体を斜めにして手首を突き出した。
「どうしようか」
「どうしようじゃねぇ! こんなの普通じゃないだろ!」
「別に普通じゃなくていいよ」
「俺は嫌だ!」
服の下に入り込んだ指が胸の突起を掠めて息を呑む。
「ひゃ」
「諦めてくれる?」
股間を緩く揉みながら、宇都宮はうっすら笑った。
「…………」
高崎の頬に朱が昇る。直接的な感覚に体温が上がる。
「たまには普通に、とか思わないワケ?」
呆れた声音。
「いいじゃん、コレが僕達の普通だよ」
「…………ふん」
高崎は目を逸らした。
上下を責められて、意識が飛ぶまで間もないと経験で知っている。
宇都宮は小さく笑って、高崎の耳朶を軽く食んだ。





この先を書くと、埋めなきゃいけなくなるので(謎)



BACK