自分の上を辿る指を高崎は見ていた。
喉元から裸の胸へと輪郭をなぞるように動く長い指。
けれど、決して華奢ではない。節がごつごつした男の指。
裸で組み敷かれて、相手も裸で。もう何度目か分からない行為。
「お前さぁ」
顎がつくほど首を曲げて、指の動きを目で追いながら口を開く。
「何かあったからって、俺に当たるなよ」
そう言うと、相手は薄く笑った。
「僕がそんな度量の狭い男に見える?」
「見えなかったら、言ってねぇ」
即座に返す。
宇都宮の指が耳の後ろへ回り、目で追うのは諦める。
そこから頬の輪郭を辿って顎へと下りて、尖った先を掴む。
顎を持ち上げられて、触れるだけのキス。
「高崎、キスする時ぐらい目瞑ってよ」
「……お前って案外」
爪が皮膚の上を掠める。
喉仏の一番出っ張った部分で止まった。
人間の急所。
「何?」
「――目細いのな」
宇都宮が喉を鳴らして笑った。
「何を今更」
苦笑ではなく、本当に零れた笑いだった。
掌が左胸にひたりと押しつけられた。
そのまま思い切り体重をかければ、止まりはしないだろうが失神くらいはするだろう。
そういう位置に手を置いて、試すような眼差しで高崎を見下ろしてくる。
だから、高崎はもう一方の手を捕まえて。
かりりと指先を軽く噛んでやった。
|