聖夜に君の願いを





時はクリスマスイブ。
「先輩、何ですか」
人気のないプラットホーム。 非常灯のぼんやりとした明かりだけが照明。
その先に金の髪の人影。
副都心は靴音を響かせながら、近付いた。
「あ、あのな」
副都心が唯一先輩と呼ぶ彼は言いにくそうに下を向いた。
つ、とその手が上がり、金色のネクタイほどいた。
それを結び直すのをじっと見ていた。
「今日はクリスマスイブだろ」
綺麗なリボン結びが出来上がる。
「だから……俺がプレゼント、じゃダメかな?」
「先輩……」
有楽町が頬を染めながら、副都心を見詰める。
「そんなの」
副都心は手を伸ばした。
「ダメなわけないじゃないですか」


「んっ」
大きいものを頬張って、有楽町の顔が歪む。
「先輩は僕が欲しいんですよね」
「んっ……欲しい……」
伏せた眼差し。
ぴちゃりと水音が響く。
「先輩、もっとあげますよ」
「あっ」
腰を突き出すと、膨れたそれが零れ落ちる。
「ダメですよ、先輩。落としちゃ」
それを咥えさせる。
「んっ、ごめ……っ」
口を開けて喉の奥まで咥え込んだ。
「副都心っ」
「何ですか、先輩」
「飲ませて……っ」
副都心は愛しげに微笑んだ。
「いいですよ。たっぷり飲ませてあげます」
有楽町は淫らに無邪気に嬉しそうに笑った。


     *   *   *


「遅れるなよ!」
大きな荷物を両手に提げた有楽町が振り返る。
人混みを縫って歩く。
「もともとお前と南北が買出し当番なんだからな!」
「分かってますよ。先輩、手伝って下さってありがとうございます」
「心のこもってない礼なんぞ、いらない」
「ひどいです、先輩」
そう言う副都心もケーキの入った巨大な箱を抱えている。
「これ、いくらなんでも大きすぎなんじゃないですか」
「銀座が予約したんだから、しょうがないだろ」
「9人分にも大きすぎると思うんですが」
「文句なら銀座に言ってくれ」
「はぁい」
文句が言えるくらいなら、この場にいない。
何が嬉しくて成人男子が9人集まってクリスマス会なのか。
副都心は先刻の妄想を反芻した。
――あの先輩はかわいかったのに。
前を行く背中。
揺れる金の髪。
いつかはあれが本当になればいいのに。
いや、なる筈だ。
「急げよ!」
くるりと振り返って言う言葉に色気はまったくなくて。
「分かってます」
だから、後姿を見ながら、その服を脱がせる妄想をすることにした。





うちの後輩は妄想癖です。
Fの片思いに気付かない鈍感先輩が好きです。



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