「何の用だよ、宇都宮」
手招きされてついていくと、空いた応接室へと通された。
高崎は御丁寧にプレートを「使用中」にする宇都宮の指先を見ていた。
「何か打ち合わせることあったか?」
「ん?すぐ済むよ」
ソファに腰をおろそうとした高崎の腕を掴み、宇都宮は壁へと押し付けた。
「何――――んぅ」
唇を塞がれて、言葉が途切れる。
「――いきなり何すん……」
「そろそろ限界でしょ」
すぐに離れた宇都宮に文句を言おうとすると、くすくす笑いと共に遮られる。
「………………」
高崎は同じ高さにある目を見返した。
やがて諦めて溜息をついた。
「…………ずりぃ」
「ん?」
宇都宮はくすくす笑って、手の甲で高崎の頬を撫でた。
「むかつく」
不機嫌に唇を曲げながら、高崎は瞼を閉じた。
触れる唇を感じる。
唇を薄く開くと、舌先がその輪郭をなぞった。
しかし、それ以上侵入しようとせずに離れていく。
「?」
不思議に思いつつ目を開けると、またくすっと笑う宇都宮が映った。
「――我慢できるの?」
「…………………っ!!」
一瞬で顔が熱くなるのを感じる。
「お前のそういうとこがむかつくんだよっ!」
「ふふ……」
いきり立つ高崎に動じた様子もない。
何を言わなくても、今夜高崎がやって来ると分かっている。
「じゃあ、行こうか。遅延して理由を聞かれるのヤでしょ」
「――お前、本当にむかつく」
肩を押して自分の前からどかした。
くすくす笑いを背後に聞きながら、先に応接室を出る。
頬が焼けるように熱い。
「むかつく……」
背後を同じ歩調でついてくる靴音が聞こえる。
それを聞きながら、わざと早足で歩いた。
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