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明日から大型連休が始まるという晩。いつもの休前日と同様に高崎は宇都宮と食事を共にし、彼のマンションに一緒に帰ってきていた。
 食事の際に呑んだワインで身体がぽかぽかとしている。
 頭の中もふわふわと浮かれた気分。
 手を繋いで寝室に入ると、我先にと服を脱いでベッドに飛び込んだ。
 先にベッドに入ったのは高崎だった。ほどなくして、宇都宮が隣に横になり、高崎を後ろから抱き締める。
 高崎が首を曲げて背後の宇都宮を見遣ると、その唇を奪われる。
 「……はあ」
 溜息のような吐息をつくと、宇都宮は項に顔を埋めてそこに跡を残したりする。
 「見えるところに跡つけんなよ」
 高崎は落ち着かなげに身を震わせる。
 「いいじゃない。明日から当分会社に行かないんだから」
 高崎の肩口を軽く噛みながら、宇都宮が応じる。
 「会社に行かなくたって、外出はするだろ」
 「そうだねぇ……」
 「何だよ、出かけたくないのかよ。せっかくの連休なのに」
 乗り気ではなさそうな宇都宮に、高崎は不満そうに鼻を鳴らす。
 「ん〜、僕は高崎とずっとこうしてられればいいよ」
 「まさか十連休ずっと、じゃないよな」
 「そのつもりだけど?」
 「俺を干からびさせるつもりか」
 「高崎、体力あるから平気でしょ」
 言いながら、宇都宮の手は高崎の中心に触れた。
 「んっ」
 ひくりと高崎の肩が跳ねる。
 「そういう、問題じゃ、なくてっ」
 宇都宮の手の動きに合わせて、高崎の言葉が途切れる。
 「俺と一緒に何処か行くのは嫌なのかよ」
 高崎が目を伏せる。
 その耳殻に唇を近付けて、宇都宮は囁きかけた。
 「嫌じゃないよ。高崎と一緒なら何処でもいい。……この部屋でもね」
 「んっ、そこで喋んなって」
 くすぐったそうに高崎が首を竦める。
 「何処か行きたいところでもあるの?」
 宇都宮は一層高崎を抱き寄せ、肌を密着させる。
 「特に、これ、っていうのはないけどさ。でも、何処か行きたい。お前と」
 「うーん……何処か考えようか。明日にでもさ」
 「う、うん……」
 高崎は頬を紅潮させて頷いた。
 宇都宮の手が会話の最中も高崎自身を弄んでいたからだ。
 「ね、高崎、口でしよっか」
 高崎はちょっと目を瞠って、それから「いい」と首を振った。
 「どうして? 口の方が気持ちイイでしょ」
 「いい。手でいい」
 高崎は同じ言葉を繰り返すと、身体に回された宇都宮の腕に手を重ねた。
 「この方がいい」
 高崎はもぞもぞと身じろぎをした。密着した宇都宮にダイレクトに伝わってくる。
 「……抱かれてるってカンジすっから……」
 ぼそりと呟いた言葉に、宇都宮は何度か目を瞬いた。
 「高崎……!」
 宇都宮は高崎を抱いた腕にぎゅっと力を込めた。
 「こ、こらっ! 限度があるだろ! いてぇ!」
 「そんな可愛いこと言うから! もう離してあげられないよ」
 「別に、離さなくていい」
 「また、そういう……」
 宇都宮は苦笑すると、高崎の頬に口を寄せた。
 「今日は覚悟してよね」
 返事は噛みつくようなキスだった。
 
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