目が覚めて、枕元の携帯電話を引き寄せる。
ちょうどいい時間。
傍らを見ると、先輩が眉尻を下げて熟睡中。
口元に涎の跡まである。
几帳面な先輩だから、寝る時も堅苦しいのかなんて思ってたけど、全然ちがくて。
無防備すぎるほど無防備に眠っている。
緩んだ口元に思わず笑ってしまう。
時間ですよ、と起こそうとしてやめた。
パンを焼いて、コーヒーを淹れよう。
コーヒーの香りで目覚めるってよくない?
僕はベッドから降りて顔を洗う。真っ白なワイシャツに袖を通して。
先輩の方を窺うと、まだ夢の中。
何だか楽しくなってくる。
先輩が朝起きて一番に見る人間が僕で。
おはようって寝ぼけた声で言うんだ。
勤務中には絶対聞けないような声で。
仕事では怒られることも多いけど、一緒に過ごした朝はそんなことなくて。
そうだ。パンを焼かなくちゃ。
サラダとベーコンエッグも添えよう。
朝からすごいなって言われるかな。
コーヒーも揃いのマグカップに淹れて。
楽しくなってくる。
ただ朝食を作るだけなのに。
先輩がいるだけで。
だから、先輩。
もう少し寝ていて下さいね。
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