「クリスマスだねぇ」
沿線の民家を飾るイルミネーションを眺めながら、宇都宮が言った。
「俺達には関係ないだろ。平日だし。それより大晦日の終日運転のが大事だ」
高崎もそれを見たものの、一瞥して顔を逸らせる。
しかし、宇都宮は故意にその発言をスルーした。
「靴下を置いてたら、プレゼントをくれるかもね」
「サンタがいるわけないだろ。それにヤローの靴下に入れられても嬉しくないし」
高崎はあくまで現実的に返す。
「そういえば、高崎、靴下間違ってたよ」
「え、マジ?悪い」
反射的に詫びを口にする高崎。
宇都宮はそこでくすっと笑った。
「素直だね、高崎」
「何で」
「分かるわけないじゃん。同じのなんだし」
「だったら、言うなよ」
高崎は機嫌を損ねて、ぷいと横を向いた。
「あはは、ごめんね」
微塵も誠意のこもっていない謝罪を返して、宇都宮は高崎の顔を覗き込む。
「慣れてるけどさ」
高崎は顔を背けたまま歩き出す。同じ歩幅でついてくる宇都宮。
「靴下、買ってあげようか?」
「いらねぇ」
「クリスマスプレゼントで」
「だから、いらないって」
ようやく高崎は宇都宮の顔を見た。
「プレゼントとか、そーいうのいらないから」
そして、再び顔を背けて一言。
「一緒に走ってられるだけでいいから」
その耳が赤く染まっていたことに気付いたのは宇都宮だけ。
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