「京浜東北、やめてよね!」
突然怒鳴り込まれて京浜東北は瞬きを繰り返した。
「さいきん酷いよ!朝昼晩構わず車輌故障だ人身だ信号機故障だって!きみ壊れすぎだよ」
煽りを受けて遅延してしまう山手から見ればごもっともな発言だ。
「それにやめてよね!今朝僕がこまち上官と並んで走ってたら割り込んで来ただろう」
「それは線路の都合だろう」
「でも、少し我慢するとか出来ないの?」
「わけわかんないこと言わないでくれよ。文句はダイヤ決めたやつに言ってくれよ」
「きみが遅れなきゃ邪魔されないで済んだんだよ!」
「あーはいはい」
冬になると衣服の厚みもあってただでさえも乗降に時間がかかり最近の山手は口煩い。
「なんで僕と上官の間にいつも割ってくるんだ」
ブツブツと繰り返されるそれがただの言い掛かりでしかないことはよくわかっている。
「そんなに上官の隣を走りたいなら線路譲ってやるよ」
ちらりと予定表を示す。
「………それってただの線路メンテじゃん」
わかってんじゃん。
口に出すとうるさそうなので京浜東北は黙り込む。
「そのまま遠くへ行きたいなぁ……」
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